葬儀の依頼者は故人の甥で、葬儀の打ち合わせより先に、相続の心配事を相談されてしまいました。故人には何人もの親族がいるのですが、故人の面倒を見ていたのはこの甥御さんだけで、他の親族はかなり疎遠だったそうです。故人は生前に全財産を甥に相続させたいと言っており、司法書士さんから「遺言書を作っておいた方がいい」とアドバイスを受けていたのですが、遺言書が見つからないということでした。
その司法書士さんが成年後見に入っていたので、もう一度家の中を探してもらうと、要件が整った遺言書の下書きが出てきたのです。「すべての財産を甥御さんに」という内容で、これにて一件落着なのですが、甥御さんは「葬儀に親族を呼ぶつもりはない」と言うのです。私は「遺言書の有無は言わなくていいから、呼んだ方がいいですよ。皆さんでお見送りした方が気持ちがスッキリしますよ」と話し、親族にも火葬に立ち会ってもらいました。「あとは司法書士の先生とうまくやってください」と話して葬儀を無事に終えました。
たぶん、故人は遺言書の下書きを一生懸命書いたのだと思います。この遺言書の下書きがあることで、おそらく故人が望む相続ができたと思います。